資産取り崩しの「4%ルール」は、退職後に資産を取り崩して生活する際のガイドラインとして広く知られています。
このルールは、1994年に米国のファイナンシャルプランナーであるウィリアム・ベンゲン(William Bengen)によって提唱されました。
彼の研究によると、リタイア後のポートフォリオ(株式と債券のバランスを取った投資)から毎年4%を引き出しても、30年間資産が枯渇しない可能性が高いとされています。
4%ルールの基本
4%ルールは、退職初年度に総資産の4%を取り崩し、以降はインフレ率に応じて引き出し額を調整するという考え方です。
たとえば、総資産が1億円の場合、初年度は1億円×4%=400万円を取り崩します。
翌年以降はインフレ率に応じて金額を増やしていきます。
4%ルールの根拠と研究
ウィリアム・ベンゲンの研究では、過去の株式市場と債券市場のデータを分析し、以下のような前提で4%ルールが成り立つことを示しました。
- 投資ポートフォリオの構成
- 株式50~75%、債券25~50%のバランスで運用
- 米国市場を基準とした過去の市場データを使用
- 引き出しの仕組み
- 退職初年度に資産の4%を引き出し、翌年以降はインフレ率に応じて調整
- 30年間の運用を想定
- 市場の歴史的データ
- 1929年の大恐慌や1970年代のインフレ時代を含めたデータを使用
- 最悪のケースでも資産が30年間持続する可能性が高い
4%ルールの実際の適用例
ケース1:総資産1億円でリタイア
- 初年度:1億円×4%=400万円を引き出す
- 2年目:インフレ率2%なら、400万円×1.02=408万円を引き出す
- 3年目:インフレ率3%なら、408万円×1.03=420.24万円を引き出す
このように、毎年の生活費はインフレ率に応じて増えていきます。
ケース2:総資産5000万円でリタイア
- 初年度:5000万円×4%=200万円を引き出す
- 2年目以降:インフレ率に応じて増額
4%ルールのメリットとデメリット
メリット
- シンプルで分かりやすい
- 毎年の引き出し額が明確
- 計画的に資産を管理できる
- 歴史的データに基づいた安全な基準
- 米国市場の過去100年以上のデータに基づく
- 極端な市場の変動にも耐えうる設計
- 長期的に資産が枯渇しにくい
- 30年間持続する可能性が高い
デメリット
- 市場環境の変化に対応しにくい
- 未来の市場は過去と異なる可能性がある
- 低成長時代や長期的な市場低迷が続くと厳しくなる
- インフレの影響を過小評価する可能性
- 近年のインフレ率が高い場合、生活費の増加に対応できないことも
- 資産が増えない可能性もある
- 取り崩しが早すぎると、長生きした場合に資産が枯渇するリスク
4%ルールの代替案
近年では、4%ルールの欠点を補うために、以下の代替案が提案されています。
- 3.5%ルール
- 4%よりも保守的に資産を取り崩し、長期的な安全性を高める
- 可変引き出し戦略
- 市場が好調な年は多めに引き出し、不調な年は少なめにする
- 動的支出調整
- 生活費を市場状況に応じて調整し、資産の枯渇リスクを抑える
まとめ
4%ルールは、退職後の資産管理の基本的な考え方として有効ですが、市場環境や個人のライフスタイルに応じて柔軟に調整することが重要です。
4%に固執せず、自身のリスク許容度や経済状況を考慮しながら、適切な資産運用戦略を立てることが、安心したリタイア生活の鍵となります。
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