――コロナ後に膨張したマネーは本当に回収されているのか
コロナ禍で世界は歴史的な金融緩和を行いました。
・中央銀行が国債を大量購入
・金利をゼロ近辺まで引き下げ
・市場へ巨額の資金供給
その結果、中央銀行のバランスシートは急拡大しました。
では現在――
そのマネーはどこまで回収されているのか?
それを理解するには、まずQT(量的引き締め)の本質を押さえる必要があります。
1|QTとは何か? ――QEの逆回転
量的緩和(QE)は、
中央銀行が国債などを購入
↓
市中銀行へ資金供給
↓
市場のマネー増加
という仕組みでした。
QTはその逆です。
・保有国債を満期償還で減らす
・再投資を停止する
・場合によっては市場で売却する
つまり、
中央銀行のバランスシートを縮小すること
がQTの本質です。
2|米国FRBのQTはどこまで進んだか?
コロナ期、FRBの総資産は約9兆ドル規模まで拡大しました。
その後、インフレ抑制のためQTを開始。
現在はピークからかなり縮小していますが、
重要なのはここです。
まだコロナ前の水準には戻っていない
つまり、
・ピークからは減少
・しかし依然として“高水位”
という状態です。
完全な資金回収ではなく、
「増えすぎた分を一部削った」段階
に過ぎません。
3|日銀はほぼQTをしていない
日本は構造が異なります。
日銀は長期にわたり大規模緩和を続けてきました。
・ETF購入
・国債大量保有
・YCC(イールドカーブコントロール)
政策修正は進んでいますが、
本格的なバランスシート縮小は限定的
むしろ依然として緩和的環境が続いています。
そのため、日本市場には
・円安効果
・流動性の支え
が残っています。
4|なぜQTは急激に進まないのか?
理論上は、マネーを一気に回収すればインフレは抑えられます。
しかし実際にはそうしません。
理由は明確です。
急激なQTの副作用
・長期金利急騰
・債券市場の混乱
・銀行の評価損拡大
・株価急落
・信用収縮
過去を振り返ると、
急な流動性縮小は金融危機を引き起こしています。
そのため中央銀行は、
「市場を壊さない範囲」でゆっくり縮小
を選びます。
5|QTの本当の影響は“流動性の増減率”
株式市場が敏感に反応するのは、
水位そのものよりも
流動性の変化スピード
です。
・急増 → 株高加速
・停止 → 上昇鈍化
・急減 → 株価調整
現在は「急減」ではなく
緩やかな縮小
です。
だから株式市場は崩れていません。
6|今後の焦点はどこか?
QTが株価に本格的な影響を与えるのは、
以下が同時発生した時です。
・QT加速
・金利再上昇
・企業利益減速
この三重苦が重なると、
流動性+業績の両面で株式は圧迫されます。
しかし現時点では、
・QTは継続しているが加速していない
・マネー総量は依然高水準
・企業業績は崩れていない
というバランス状態です。
7|結論:QTは進んでいるが「完全回収」ではない
整理すると、
■ コロナ期の超拡張バランスシートは縮小中
■ しかしコロナ前水準までは戻っていない
■ 日銀は依然として緩和寄り
■ 流動性は減っているが枯渇はしていない
つまり現在は、
マネーが減っている局面ではなく
「増えなくなった」局面
です。
株式市場は“無限の燃料”ではありませんが、
タンクはまだ空ではありません。
まとめ
QTは確実に進んでいます。
しかしそれは、
「バブルを潰す急ブレーキ」ではなく
「アクセルをゆるめた状態」
に近い。
本格的な転換点は、
・流動性の急収縮
・金利急騰
・利益減速
が同時に起きた時です。
そこを見極めることが、
今後の株式投資で最も重要なポイントになります。


コメント