ここ数年、
「日本は貧しくなった」
「いや、実はお金持ちは増えている」
という、一見すると矛盾した言葉をよく耳にします。
この矛盾を数字で可視化してくれるのが、
株式会社野村総合研究所(NRI)が定期的に公表している
「純金融資産保有額別の世帯数と資産規模の推計」です。
ここでは、
『2021年・2023年・2025年(最新推計ベース)』のデータを軸に、
いま日本で何が起きているのか、
そして私たちはどこに立っているのかを、考察します。
純金融資産とは何か?まず前提を整理する
NRIが使う「純金融資産」とは、
- 預貯金
- 株式
- 投資信託
- 債券
- 生命保険(貯蓄性部分)
などの金融資産の合計から、
- 住宅ローン
- 各種借入金
といった負債を差し引いた金額です。
つまり、
「本当に自由に使えるお金の総量」
と考えるとイメージしやすいでしょう。
不動産(自宅など)は含まれません。
あくまで「金融資産」に限定した指標です。
NRIが定義する「資産階層」
NRIは日本の世帯を、純金融資産額によって以下の5階層に分類しています。
| 階層 | 純金融資産額 |
|---|---|
| 超富裕層 | 5億円以上 |
| 富裕層 | 1億円〜5億円未満 |
| 準富裕層 | 5,000万円〜1億円未満 |
| アッパーマス層 | 3,000万円〜5,000万円未満 |
| マス層 | 3,000万円未満 |
ここで重要なのは、
日本の大多数の世帯は「マス層」に属しているという点です。
2021年→2023年で何が起きたのか?
まずは数字を見てみましょう。
富裕層・超富裕層の変化
- 2021年
- 約148.5万世帯
- 純金融資産総額:約364兆円
- 2023年
- 約165.3万世帯
- 純金融資産総額:約469兆円
世帯数は約11%増、
資産総額は約29%増という、かなり大きな伸びです。
これは偶然ではありません。
なぜ富裕層は増えたのか?
理由は大きく3つあります。
① 株高と円安
2020年代に入り、日本株は大きく上昇しました。
さらに円安が進行し、外貨建て資産の評価額も膨らみました。
投資をしていた人ほど、何もせずとも資産が増えた
という環境だったのです。
② 準富裕層の「繰り上がり」
5,000万円〜1億円の準富裕層が増え、
そこから富裕層へ昇格する世帯が増加しました。
この層の特徴は、
- 共働き
- 長期積立投資
- インデックス投資中心
- 派手な生活はしていない
という、
ごく普通の生活スタイルである点です。
③ 相続による資産移転
団塊世代・団塊ジュニア世代を中心に、
高額な金融資産が次世代へ移り始めています。
相続は、
「一夜にして資産階層が変わるイベント」でもあります。
2025年推計で見えてきた「新しい富裕層像」
NRIが最近強調しているキーワードがあります。
それが、
「いつの間にか富裕層」
- 起業家でもない
- 医師・経営者でもない
- 宝くじが当たったわけでもない
それでも、
気づけば純金融資産1億円を超えていた
こうした世帯が、
40〜50代を中心に増えています。
これは、日本社会にとって
静かだが非常に大きな変化です。
では、一般の人たちはどうなのか?
ここが最も重要なポイントです。
日本の大多数は「マス層」
- 純金融資産3,000万円未満
- 世帯全体の約9割
中央値(真ん中の世帯)は、
さらに低い水準にあると考えられます。
つまり、
富裕層が増えた=みんなが豊かになった
では決してないのです。
家計金融資産は過去最高、でも実感がない理由
日本全体の家計金融資産は、
2,200兆円超と過去最高水準にあります。
それでも多くの人が
「生活が苦しい」と感じる理由は明確です。
👉 資産が一部の世帯に集中しているから
上位数%の世帯が、
全体の資産の大きな割合を保有しています。
いま日本で起きている本当の変化
整理すると、現在の日本はこういう状態です。
- 富裕層・超富裕層は確実に増えている
- 準富裕層も厚みを増している
- 一方で、マス層の資産増加は緩やか
- 結果として資産の二極化が進行中
これは「格差」というより、
「金融行動の差が、結果として表面化した」
と言った方が近いかもしれません。
お金の差は「才能」より「時間」と「行動」
NRIのデータが示しているのは、
単なるお金持ち自慢の話ではありません。
- 早くから投資を始めたか
- 長期で続けたか
- 感情に振り回されなかったか
この差が、
10年・20年後に決定的な差となって現れる
という現実です。
まとめ:あなたはいま、どこに立っているか?
資産形成は、
他人と比べるためのものではありません。
ですが、
社会全体の地図を知ることは、
自分の現在地を確認するうえで重要です。
- マス層にいるなら、どう抜け出すか
- アッパーマス層なら、準富裕層をどう目指すか
- すでに準富裕層なら、守りをどう固めるか
NRIのデータは、
その「考える材料」を静かに提示してくれています。



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